公益社団法人空気調和・衛生工学会 住宅設備委員会
住宅設備のBIM活用検討小委員会
委員会成果報告書 住宅設備のBIM活用検討
第3章 住宅設備でのBIM活用ガイドラインのあり方
- 3.1 BIM活用ガイドラインについて
- 3.1.2 住宅設備におけるBIM活用ガイドラインのあり方
- 住宅設備と他の建物における設備の最大の違いは、建物使用者である入居者の好みが反映されることと、多くの場合、建物使用者が設備の設計・施工・監理について素人であることであり、一般的には、保守管理において、コストを掛ける意識が低く、トラブル発生時にのみ対応する傾向が強い。大手開発事業者が管理する場合においても、共用部分については、定期的な保守管理が行われるが、専用部分である各住戸内においては、入居者に委ねられている部分が多い。
- (1)住宅設備における機器・器具の選定とBIM
- 住宅以外の建物では、施設利用者の好みよりも施主からの要望による仕様により画一的な選定が可能であるが、住宅設備においては、台所廻り、浴室廻り、洗面・ユーティリティー廻りの衛生器具や、空調・換気設備における機器類の性能やデザインの選定においては、施主でも賃借人でも入居し設備を使用する者の好みとコストによる影響が大きい。 BIMによる設計は、3Dによる製品ごとの外観を視認しながら設計空間に配置が可能であり、モデルデータに仕様データが関連付けられているため、実施設計をクラウド環境利用した設計システムを介して詳細な情報をリアルタイムに確認しながら行える。また、機器表、器具表の作成において自動化が可能であり、設計作業の効率化を図ることができる。機器表・器具表などの設計情報は、将来的にはデータベース化によって図面としては、設計システム化に代わって行くと予想できる。
- (2)住宅設備のプレゼンテーション・販売促進とBIM
- 施主側と設計者が住宅設備の情報共有を円滑にするためのプレゼンテーションを行う場合には、BIMを活用するメリットは大きい。専門家ではないオーナーにとっては、設備機器を視覚的或いは性能をデータとして確認できることは、資機材に対する理解を深め、設計段階での選定を円滑にすることができる。また、3Dデータを3D空間上に配置するため、VR(バーチャルリアリティ:virtual reality)などを活用し、仮想空間における体験型のプレゼンテーションが可能となり、施主や顧客への有効な販売促進ツールへの活用が可能となる。このためには、清製造事業者がBIM設計に対するデータ配信の仕組みを準備する必要が有るが、全国的に統一された配信環境を構築する必要がある。ガイドラインの制作はその一助となるように、共通仕様を示す必要がある。
- 図3.2 3D空間と3Dモデルによる施主との情報共有
- (3)住宅設備における設備の管理とBIM
- BIMにおけるオブジェクトには、設計や管理に必要な情報が含まれているため、その情報をITインフラにおけるシステム化によって有効に活用することができる。特に、データベースシステムと連携することによって、様々な管理システムの構築することが可能である。戸建住宅においては特に、従来、定期的なメンテナンスは行われることはなく、トラブル発生時にメーカー、施工者、設計者に依頼することが多い。今後、住宅設備がインターネットでつながるIoT(Internet of Things)化が進むと考えられるため、広域の住宅物件の保守管理をシステム化することが可能である。例えば警備会社の管理システムと連携して設備資機材の管理が可能である。共同住宅においては、大手デベロッパーやオーナー或いは管理代行事業者が、共用設備の管理に加え、住戸ごとの入居者及び設備資機材の管理が可能となる。特にインターネット環境を活用できれば、全国区或いは国際的な管理体制を構築することが可能となる。
- (4)住宅設備におけるトラブル対応とBIM
- 設備管理代行事業者に加え、一部の警備会社は、設備システムのメンテナンスを業務内容に含めている場合が有る。特に機械警備システムを導入している整備会社においては、BIMのデータとインターネット上のデータベースシステムを持つ設備管理システムと連携して、設備トラブルの発生時に迅速な対応が可能となる。
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- 図3.3 BIMデータを活用した広域設備管理システム
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- (5)住宅設備の業務プロセスとBIM
- 従来の2D図面を基にした設計では、設計時に収まりの検討が不十分であることが多く、施工時にその都度検討することが多く、手戻り発生することも頻繁に起こる。BIMによる設計は、3Dモデルによるため、入居者による利便性の検討も含めて、施工者も交えた業務プロセスの適正化が必要となる。
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- 図3.5 BIMを活用した場合の設計工程と他工程の事例